CASE STUDY

導入事例

作業データの集計時間を大幅短縮 生産性可視化に向け知見を横展開

アサヒロジ株式会社
事業
物流業
お話を伺った方
アサヒロジ株式会社
近畿圏支社 吹田支店 生産課 課長 今井和明様(写真右)
近畿圏支社 吹田支店 生産課 主管 大米俊行様(写真左)
システム統括部 鈴木 梨央奈様(写真中央)
契約主体 3PL
事例パターン 本社
現場規模
(稼働人数)
100人以上
荷種 食品
課題

社外コミュニケーション

庫内管理の平準化

レポート自動生成

生産性可視化

作業コスト管理

進捗管理

関西の大型拠点で、手書きだった庫内スタッフの作業記録を、KURANDOの「Logimeter(ロジメーター)」によるリアルタイム取得に変更した。任意のKPIに基づいてデータを自動抽出する集計ツール「Logiscope(ロジスコープ)」の活用も含めたノウハウの横展開に着手。一元化された各拠点データを事業戦略に生かしていく青写真を描いている。 (本誌編集部)

6時間から1時間へ改善

アサヒグループの物流会社5社が合併して発足したアサヒロジは、全国に78拠点を配置し、最大で1日当たり延べ約6千台のトラックを扱う全国規模の輸配送網を誇る。

 

輸送力や品質力といった「5つの力」を強みに掲げるが、その〝筆頭〟とするのが課題解決を進める「改善力」だ。各支社などの改善・改革活動は「K2」と呼ばれ、取り組みを全社で競う「全社大会」を毎年開催。優秀な活動を表彰するなど同社のDNAとなっている。

 

1日平均で約200人が交代で稼働する吹田支店(大阪府吹田市)が2023年の「K2」として着手したのが、各庫内スタッフがその日に行った作業項目や開始・終了時間などをまとめた「日報」のデータ入力業務の負担軽減だ。

 

日報は、同支店の正社員含め計約260人の給与や派遣・協力会社への支払額、日々の収支を把握するのに不可欠なデータだ。だが、スタッフが記憶を頼りに手書きした紙の日報を、エクセルの「支払表」に転記する管理方式だったため、記入漏れや誤記入、派遣・協力会社側の管理データとの齟齬などが頻発。事務員2人が毎日、確認作業などに約6時間を費やしていた。

 

同支店生産課の今井和明課長は「スタッフは、当社と共通書式の日報に加えて各所属企業の日報も記入するが、書式はまちまちで内容も記憶頼み。事務員が複数の日報を突き合わせてチェックしていた。これを約200人分やるため、慣れない人では1日がかりだった」と振り返る。

 

同支店は「全社的な課題」として、本社システム統括部に協力を要請。複数の改善ツールを比較・検討した結果、KURANDOの「Logimeter(ロジメーター)」を活用して作業実績データを取得することにした。

 

ロジメーターはスタッフが出退勤時や作業時間の節目で、タブレットに表示された作業項目を選択し、自身のQRコードをかざせば作業項目と分単位の所要時間を計測できる。個々のスタッフが端末を携帯する必要がないため、初期投資も抑えられた。各現場や事務所など支店内の約30カ所にタブレットを設置。23年12月から手書き日報とも併用しながらトライアル運用を開始した。

吹田支店の作業現場。スタッフがタブレットで作業項目を選び、自身のQRコードをかざすと時間が記録される

数十年にわたって定着していた業務ルーティーンの変更は〝産みの苦しみ〟も伴った。

 

現場で働く協力会社のスタッフは比較的シニア層が多く、慣れた手書き日報からタブレット操作への変更に抵抗感が少なくなかった。使用マニュアルを整備したものの、最初はスタッフが作業項目をタップする動作もおぼつかないため、出勤時や昼食休憩時には担当者をタブレット付近に配置しての「声掛け」を余儀なくされた。

 

また、トライアル運用当初は、正しい作業データを取得できない状況に陥った。選択する作業項目の多さによるタブレットのタップミスや、QRコードのかざし忘れが後を絶たなかったためだ。正しいデータが取得できなければ、事務員も作業項目や作業時間の確認をやめられない。請求明細にも使用する約650の作業項目を約140まで減らし、タブレットの表示項目数を10から5まで絞り込んだ。

 

加えて、スタッフの〝言い値〟が反映される手書き日報では、「10分早く出勤したから10分早く退勤して、日報は通常時間でつける」(同課の大米俊行主管)などの運用が可能だったため、一部スタッフからはデータを修正したいとの要望が続出した。現場に息苦しさが醸成されないよう、派遣・協力会社も巻き込みながら「時間管理の緩いスタッフに重ねて個別のコミュニケーションをとっていった」(大米主管)という。

 

これらの試行錯誤を経たものの、導入の効果は大きかった。事務員の内容確認や修正にかかる時間が大幅に減り、24年7月の検証では、これまで1日平均8件だった内容確認件数が平均4・2件、360分だった修正時間は同32分と大幅に改善。2人がかりで6時間を割いていた支払表の作成時間は1時間以内まで短縮された。

 

トライアル期間中の手書き日報を基に計算した人件費と、ロジメーターのデータを基に計算した人件費の誤差が1%未満だったことで、同年9月からは本格運用に入った。今井課長は「手書きとの誤差がこれほど小さいのなら、あとは時間短縮のメリットしかない」と手応えを語る。

支店データの一元管理も

ロジメーター導入で正確な作業データ取得が可能になったことで、同支店は取得したデータを活用して日々の生産性を可視化する次のステップに踏み出した。

 

人件費などのコスト上昇が続く現場では、生産性の管理がより重要になっている。ただ、そのために必要なデータは、売り上げ実績や勤怠管理情報など多岐にわたる。現状把握や改善提案資料の作成には、外部を含むさまざまなシステムからデータを抽出する作業を日々、余儀なくされる。多忙な現場管理者に時間的余裕はないが、自動集計ができるBIツールを使うにも高額な導入コストが悩みの種だ。

 

同支店が選んだのは、ロジメーターの導入企業が無料で利用できるKURANDOの「Logiscope(ロジスコープ)」。ロジメーターと外部システムのデータとを連携させ、設定したKPIに基づいて必要なデータを抽出。グラフや表を自動作成する簡易BIツールだ。抽出データなどの初期設定はKURANDOがサポートする。

 

同支店では現在、一部の作業現場におけるスタッフ1人当たりの1時間の作業量について、作業実績やロジメーターのデータなどを連携させて実際の生産性を計測。設定したKPIとの比較・分析を実施している。分析を基に、季節ごとの条件変化や移動時間、スタッフ数によって1人当たりの生産性も変わることが分かったという。

 

今井課長は「KPI未達の原因がスタッフ数にあるのか単価なのか、その日にトラブルがあったのか、もしくはKPIの妥当性か──改善ポイントの当たりを付けやすくなった」と強調する。

 

システム統括部は、同支店のノウハウを横展開する可能性を探る。25年中には、東京・品川の拠点にロジメーターとロジスコープを導入する予定だ。ロジスコープには複数拠点のデータを統合できる機能があり、将来的には管理権限をシステム統括部に移し、各支社が20日と月末に報告する採算速報を一元管理することも視野に入れている。

 

期待されるのは、各拠点でまちまちだった生産性データの粒度がそろう効果だ。同じ基準で各拠点の生産性を一覧できれば、DNAの「改善力」も拠点の垣根を越えて展開しやすい。

 

システム統括部の鈴木梨央奈氏は「手書きからシステムへといった業務改善メリットに加え、生産性や適正人員の把握、取得したデータを基にした価格の妥当性の分析などの取り組みも検討していきたい」と話している。

※上記はLOGI-BIZ onlineにて掲載された取材記事です。