導入事例
OCR装置と専用シートによる庫内作業の実績管理を、KURANDOの「Logimeter(ロジメーター)」に置き換えた。実績のデータ化と集計にかけていた人時が大幅に削減されて、精度の高い物流ABCとリアルタイムの進捗管理が実現し、柔軟な要員配置が可能になった。全国17物流センターへの水平展開を約10カ月で完了した。 (本誌編集部)
NTTロジスコはNTTの物流部を前身とする物流子会社だ。2021年3月期の売上高は約400億円。外販比率は60%強。全国に17物流センターを展開し、IT機器、医療機器、化粧品、エンタテインメント商品などの一般荷主約200社の3PLパートナーを務める。
当初はN T Tグループの通信資材や通信機器、電話帳などの取り扱いが中心だった。しかし、固定電話から携帯電話への移行をはじめ環境の変化によってベースカーゴの長期的な減少が見込まれたことから、2008年に外販に進出した。グループ向け業務で培ったICTと標準化を徹底したオペレーション、緻密な原価管理に裏打ちされたコスト競争力を武器にしている。
同社の村上浩二サービス本部サービス推進部長は「当社はトヨタ生産方式を3 P L 事業に応用した『L G P S(LoGisco Production System)』と呼ぶ独自の手法で効率化を進めてきた。それをベースに全国の庫内作業を標準化している。標準化はNTT時代からの当社のDNAだ」という。
情報システム、ツール、プロセスを全拠点で共通化。庫内の表示物も統一して、同じルールでエリアやラックの列・段・間口に番号を振っている。そのため作業員は初めて応援に行く現場でもスムーズに業務につける。さらには作業員の多能工化を進めることで、物量の波動に柔軟に対応する体制を整えている。
実績管理では、全ての庫内業務を「活動」単位に分解して稼働時間を把握する「物流ABC(活動基準原価計算)」を20年近くにわたり継続してきた。作業の実態を正確に把握してムダを取り、コストを削減するPDCAサイクルを回している。荷主にサービスレベルを保証する「SLA」や、原価の内訳を開示する「オープンブック」などにもデータを役立てている。
実績データの取得には、これまでOCR(光学文字認識)装置と専用シートを利用してきた。庫内作業員が終業時にその日の業務日報を専用シートに記入、それをスキャナーで読み取りデータ化する。手入力を回避するため約20年前に導入したシステムだが、運用上の課題があった。OCRシステムは記入ミスやシートの汚れによって一定数の読み取りエラーが発生する。そのため各拠点の事務職や本社スタッフがデータを精査して修正する必要があった。1日約2千枚の読み取りのうち、エラーの数は600枚近くに上っていた。必要な数の専用シートを各現場に補充して回収、管理するのも手間がかかった。
現場のリーダーたちにとっては、データ化に時間がかかることも問題だった。当日の実績を社内システムで確認できるようになるのは翌日午後。それでは現場の収支を日次で管理する「日次収支管理」に間に合わない。そのため本社の集計を待たず、自分が担当する現場の作業実績を表計算ソフトに手入力して管理していた。
いずれも紙を使った実績管理を続ける限り解決は難しい。そこで同社のシステム部門は、専用シートとOCRを代替する方法を調べ上げた。多くの候補が挙がった中から二つのツールを選び、トライアルを実施した。その一つがKURANDO(クランド)の庫内作業可視化ソリューション「Logimeter(ロジメーター)」だった。現場の各所にタブレットを配置。作業員は出退勤や業務の節目、休憩時などに自分の名札をタブレットにかざす。それだけで個人別の作業実績を分単位で記録して、各種の集計リポートを自動作成する。作業の進捗もロジメーターのクラウドシステムを通してリアルタイムで把握できる。
必要な設備は一般的なタブレットだけ。他の見える化ツールと違って作業員に1人1台端末を持たせる必要がないため初期投資を抑えられる。クラウドサービスも初期費用無料の安価な月額料金で利用できる。
作業員はタブレットに名札をかざすだけ。写真はNTTロジスコ「メディカルディストリビューションセンター東京」(大田区平和島)
医療機器を扱うメディカルディストリビューションセンターにロジメーターを導入し、約半年間にわたるトライアルを開始した。効果は即座に現れた。従来、同センターの現場リーダーたちは日次収支の資料作成に1日当たり1時間を割いていた。それが5分で済むようになった。読み取りデータの修正にかかる時間も1日当たり30分から15分に半減した。
しかも、自分のPCやタブレットで作業員全員のリアルタイムのステータスをいつでも確認できる。当日の作業計画と突き合わせ、遅れの出ている工程があれば人手に余裕のある工程から作業員を応援にやれる。同センターの責任者を務めるNTTロジスコサービスの西嶋則文センター長は「業務別の作業員配置がリアルに見えるので、日次収支の勝ち負けが出る前に手が打てる。これはOCRの仕組みにはなかったプラスアルファの効果だ」と評価する。
トライアルではシステム部門が社内システムとの連係を検証。並行してサービス推進部がツールの使用感やデータ精度を確認した。NTTロジスコの根野泰輔サービス本部サービス推進部LO担当は「最大のポイントは、使いやすさ。作業員たちの声を聞いて、現場に受け入れてもらえることを重視した」という。
投資効果も検証した。OCRシートの記入やデータ補正、集計作業に投入していたトータルの人時を約3分1に削減できるというシミュレーション結果が出た。直接的な人件費削減効果だけでも十分にペイする。OCRシステムの維持費や専用シートも不要になる。
2021年4月、同社はロジメーターを採用して全センターに導入することを決定した。村上部長は「本社主導で同じ仕組みを水平展開することでガバナンスを強化する。最終的には経営層のPCから各拠点の日次収支やKPIをいつでも全国横並びで見られるところまで持っていきたい」という。
同社の拠点はいずれも複数荷主が同居する汎用センターだ。まずはセンターごとにそれぞれ対象とする物流を選んでモデル物流として先行導入・定着を図った。本社スタッフがマニュアルを作成。センターの統括責任者とモデル物流の担当者を対象に説明会を開いた。
当初1カ月はサービス推進部のスタッフが各拠点に入り、現場でモデル物流の担当者をサポートした。ロジメーターのデータを検証、エラーの減少を確認した上で、導入1〜3カ月で紙の作業日報の使用をやめてペーパーレス化を実現した。
習熟がある程度進んだ段階で、今度はモデル物流の担当者が教師役となり、同じセンター内の他の物流案件への浸透を図った。この導入ステップを踏むことで全センターへの水平展開を約10カ月でほぼ完了した。22年の年明けからは本格的な活用に歩を進める。リアルタイムの見える化システムを活用して、荷主の利益に貢献するソリューションに磨きを掛けていく考えだ。
※上記はLOGI-BIZ onlineにて掲載された取材記事です。